酵素とは、タンパク質でできた触媒である(リボザイムは例外)。
今回は、何かと話題の”酵素”を簡潔にまとめてみた。
酵素とは?
酵素は生命を維持するさまざまな化学反応を触媒するタンパク質のことであり、細胞内の化学反応は酵素のはたらきによって行われる。
そのため、酵素がないと生きていけないといえる。
・触媒
化学反応の前後で、そのもの自体は変化しないが、反応を促進させる物質。
酵素の性質
酵素には重要な性質が2つある。
① 基質特異性
② 反応特異性
① 基質特異性
酵素は基質と結合することで、化学反応を触媒するが、類似した構造をもつ限られた化合物に対してはたらきかける性質がある。
これを基質特異性という。
・基質
酵素が反応する物質のことを基質と呼ぶ。
ちなみに、化学反応の結果、できる物質を生成物と呼ぶ。
② 反応特異性
酵素は特定の反応を促進し、触媒する反応が決まっている。
つまり、反応特異性があるといえる。
酵素反応速度に影響する要因
酵素が最大限に能力を発揮するにはいくつもの”条件”が存在する。
① 温度
② pH
③ 基質濃度
④ 阻害剤
⑤ 補因子
⑥ 酵素濃度
⑦ 圧力
① 温度
酵素には固有の最も高い反応速度を示す温度があり、これを至適温度という。
一般的に温度が高くなるほど、基質と酵素が結合しやすくなるため、酵素の活性が高くなる。
しかし、酵素はタンパク質であるため、ある温度を超えてしまうと、タンパク質の変性が起こり、酵素の形が崩れてしまい、酵素活性を失ってしまう
これを酵素の失活という。
② pH
酵素はタンパク質であるため、タンパク質の形はpHの影響を受ける。
そのため、各酵素は基質と結合しやすいpHが決まっている。
これを至適pHという。
③ 基質濃度
酵素反応速度は基質濃度に比例して増大する。
しかし、ある濃度以上になると、反応速度が一定になる。
④ 阻害剤
阻害剤があると酵素の活性が著しく低下する。
⑤ 補因子
ホロ酵素と呼ばれる酵素は、補因子である金属イオンなどと結合していない状態(アポ酵素)では、酵素活性が著しく低下する。
また、補酵素(ビタミンB群など)が、存在しない環境下では、反応速度が著しく低下する。
・ホロ酵素
補因子などの補助物質と結合することで、化学反応を触媒する機能をもつことができる酵素である。
・アポ酵素
ホロ酵素から補因子を取り去った、タンパク質部分のことをいう。
アポ酵素自身は化学反応を触媒する機能を有していない。
つまり、”アポ酵素+補因子=ホロ酵素” である。
⑥ 酵素濃度
酵素濃度が高いときは、酵素反応が非常に速く進む。
基質が消費され尽くした時点で、反応が終わってしまう。
⑦ 圧力
圧力を加えることで、基質と酵素とのあいだの距離が近づくため、基質と酵素が結合しやすくなり、酵素反応速度が速くなる。
酵素活性の調節
① アロステリック調節
② 共有結合性修飾による調節
① アロステリック調節
酵素の活性が活性中心とは異なる部分(アロステリック部位)に結合する物質(エフェクター)によって、可逆的に調節されることをアロステリック調節という。
・活性中心
基質と結合する部位のことを活性中心と呼ぶ。
② 共有結合性修飾による調節
リン酸基などの低分子化合物が酵素と結合したり、その結合が切れたりすることで、酵素活性を調節する方法がある。
参考図書
・東京大学生命科学教科書編集委員会 編, 理系総合のための生命科学, 第3版, 羊土社, 2015
・鈴木敬一郎 本家孝一 大河原知水 藤原範子 編著, カラーイラストで学ぶ 集中講義 生化学, 改訂2版, 2017