細胞膜は、細胞内外の物質(栄養物、老廃物、イオンなど)の出入りを調節することで、細胞の生命活動を維持している。
ここでは、細胞内外の物質輸送が、どのように行われているのかを簡潔にまとめてみた。
細胞内外の物質輸送
細胞膜における物質の移動手段は、3種類に分類される。
① 受動輸送
② 能動輸送
③ 膜動輸送
① 受動輸送
受動輸送は、細胞膜の内・外における濃度勾配(物質濃度の勾配)にしたがった拡散による輸送のことである。
つまり、物質が物質濃度の高い側から低い側へと移動するということである。
受動輸送は、エネルギーを必要としないことが特徴である。
受動輸送には、単純拡散と促進拡散とがある。
単純拡散(非選択的輸送)
細胞膜を濃度勾配にしたがって移動することを単純拡散という。
非特定の物質が不特定の細胞膜を透過することから、非選択的輸送であるといえる。
例:肺における酸素・二酸化炭素分子の拡散
肺の肺胞において、呼吸膜を介して血液と吸いこんだ空気とのあいだで行われる”酸素・二酸化炭素交換”は、単純拡散のひとつである。
促進拡散(選択的輸送)
細胞膜に組み込まれた”輸送タンパク質”と結合することで、物質が移動することを促進拡散という。
特定の物質が特定の輸送タンパク質を透過することから、選択的輸送であるといえる。
例:イオンチャネル(小孔)を通るイオンの移動
② 能動輸送
能動輸送は、細胞膜の内・外における濃度勾配(物質濃度の勾配)に逆らった輸送のことである。
つまり、物質が物質濃度の低い側から高い側へと移動するということである。
能動輸送は、エネルギーを必要とすることが特徴である。
そのため、エネルギーが少ないと、能動輸送の機能は低下する。
例:ナトリウムポンプ、カルシウムポンプ、プロトンポンプなど
③ 膜動輸送
輸送タンパク質やチャネルでは運ぶことができない巨大な物質を輸送するときに、細胞膜自体の形態変化を伴う輸送のことを膜動輸送という。
膜動輸送には、エキソサイトーシスとエンドサイトーシスがある。
エキソサイトーシス(開口分泌)
エキソサイトーシスは、細胞内で産生されたホルモンや酵素がゴルジ体で小胞体につめられ、その小胞が細胞膜と融合することで細胞外に放出される方法である。
エンドサイトーシス(飲食作用)
エンドサイトーシスは、細胞外の物質を細胞膜の小胞化と融合により、細胞内部に取り込む方法のことである。
参考図書
・櫻田 忍, 櫻田 司 編集:機能形態学, 改訂第 3 版, 南江堂, 2014